近年、「デジタル終活」という言葉が注目を集めています。スマホやパソコンの中には、連絡先や写真といった思い出だけでなく、サブスク契約や銀行口座、電子マネー、ポイントといったお金に関わるデータも数多く眠っています。もし突然の病気や事故で本人が操作できなくなった場合、残された家族は「スマホのロック解除ができない」「サブスクの解約方法が分からない」「銀行口座が見つからない」といった困難に直面します。
この記事では、デジタル終活の基本から、スマホ・サブスク・銀行口座といった重要な情報を家族にスムーズに引き継ぐための準備方法を詳しく解説します。初心者にもわかりやすく整理し、検索ユーザーが知りたい「何をどう準備すべきか」という疑問に答える内容にしました。これを読めば、家族に迷惑をかけないための具体的なステップが見えてくるはずです。
デジタル終活の基本とスマホ・サブスクの準備
スマホのロック解除とパスワード共有の工夫
デジタル終活で最も重要なのは、まず「スマホのロック解除方法」を家族に伝えることです。多くの人は指紋認証や顔認証を利用していますが、死亡後には生体認証が使えないケースもあります。そのため、パスコードやログインパスワードを安全に残す工夫が必要です。例えば、紙に書いたパスワードを修正テープで隠し、緊急時だけ剥がして確認できるようにする「スマホのスペアキー」という方法があります。また、専用のパスワード管理アプリや、いざという時に家族に通知が送られるサービスを活用するのも有効です。
サブスク契約のリスト化と解約のしやすさ
動画配信や音楽配信、電子書籍などのサブスクは、今や多くの人が複数契約しています。しかし、解約の手続きを家族が行うのは簡単ではありません。請求がクレジットカード経由の場合、明細を取り寄せてひとつひとつ確認する必要があります。そこで、デジタル終活では「サブスク契約の一覧」をあらかじめ作成しておくことが大切です。パスワード管理ノートやエクセルで契約名・ID・支払方法をまとめておけば、遺族の負担を大きく減らせます。
Googleアカウント無効化管理ツールの活用
Googleは「アカウント無効化管理ツール」という機能を提供しています。これは、アカウントが一定期間利用されなかった場合に、指定した家族や友人にデータを渡す仕組みです。写真や連絡先、メールなど、大切な情報を信頼できる人に残すことができるため、デジタル遺品整理にとても有効です。利用設定は数分ででき、放置しておくと「アカウントが消える」リスクを避けられるので、早めに設定しておきましょう。
銀行口座・ポイント・データ管理のデジタル終活
銀行口座のリスト化とマイナンバー連携
銀行口座をそのまま放置しておくと「休眠預金」として国に移管されてしまう場合があります。2018年に施行された「休眠預金等活用法」により、10年以上動きのない口座は自動的に管理が移る仕組みになっています。これを防ぐためには、生前に「利用している銀行口座のリスト」を作っておきましょう。また、マイナンバーと銀行口座をひも付ける「預貯金口座の付番制度」を利用すれば、遺族が一括で口座を照会できるので、手続きが格段に楽になります。
隠したいデータと暗号化の活用
デジタル終活では「残したい情報」だけでなく「見せたくない情報」への配慮も大切です。プライベートなデータや個人的な記録は、暗号化機能を持つ外付けストレージに保存しておくと安心です。例えば、アイ・オー・データの暗号化ストレージのように、パスワード入力なしでは読み取れない製品を利用すれば、家庭内での情報漏えいを防ぐことができます。「残す」「隠す」を明確に分けて整理するのがポイントです。
ポイントやマイルの相続可否を確認
意外と忘れられがちなのが「ポイントやマイル」の扱いです。例えば、ビックカメラのポイントは相続不可ですが、ヨドバシカメラのポイントは遺族でも利用可能。航空会社のマイルはANAやJALのように相続できる場合もあります。利用規約によって扱いが異なるため、あらかじめ確認し、使い切るか家族に伝えておくのが賢明です。デジタル終活では「お金の資産」だけでなく「ポイント資産」にも注意を払う必要があります。
デジタル終活でトラブルを防ぐ実践的な工夫
パスワード管理ノートとクラウドの使い分け
デジタル終活に取り組む際、多くの人が悩むのが「パスワードをどう管理するか」という問題です。スマホやサブスク、銀行口座など、あらゆるサービスにログイン情報が必要で、これらを家族に伝える方法を決めておかないと大きなトラブルにつながります。基本的には、紙のパスワード管理ノートにまとめておくと、デジタルが苦手な家族でも安心して利用できます。一方で、セキュリティ面を重視するなら、クラウド型のパスワード管理サービスを活用するのも有効です。ただし、クラウドの場合は「マスターパスワード」をどう残すかが課題になるため、紙とデジタルを併用しながら工夫するのが理想的です。
家族と事前に話し合う重要性
デジタル終活は、自分だけで進めるのではなく、家族とあらかじめ話し合っておくことがとても重要です。特に「誰にどの情報を渡すか」を決めておかないと、遺族間でトラブルになるケースもあります。例えば、写真や動画など思い出のデータを誰が管理するか、サブスク契約を誰が解約するか、銀行口座のリストを誰が確認するかなど、具体的に役割を決めておくと安心です。口頭で話すだけでなく、簡単なメモを残しておくだけでも家族の負担が減ります。終活というと重く感じられがちですが、家族の未来を守るための前向きな準備と考えると取り組みやすくなります。
弁護士や専門家に相談するメリット
もしデジタル終活を自分だけで整理するのが不安な場合は、弁護士や専門家に相談するのも有効です。特に「相続に関わる銀行口座」や「デジタル証券・仮想通貨」などは、法的な手続きや税金の知識が必要になるため、専門家に助言をもらうことでリスクを回避できます。また、専門家は最新の法律や制度に詳しいため、効率よく安全に情報を整理できます。最近では「デジタル遺品整理士」という資格を持つ人も増えており、実際にパソコンやスマホのデータ整理を代行してくれるサービスも登場しています。信頼できる専門家にサポートしてもらえば、安心して準備を進められるでしょう。
デジタル終活を始めるタイミングと進め方
元気なうちに準備を始める理由
デジタル終活は「まだ早い」と感じて先延ばしにされがちですが、元気なうちに始めることが大切です。なぜなら、突然の事故や病気で判断力を失ってしまうと、パスワードや契約情報を家族に伝えられなくなるからです。また、高齢になると「どのサービスに登録しているか」を思い出すのが難しくなることもあります。若いうちから「スマホやサブスクの契約一覧を作る」「銀行口座をリスト化する」といった基本的なことを習慣化しておけば、将来もスムーズにデジタル終活を続けられます。
少しずつ整理していくステップ
一度にすべてを完璧に整理しようとすると、デジタル終活は大変に感じてしまいます。そのため「少しずつ進める」ことがポイントです。例えば、まずはスマホのパスワードを書き出して保管する、次にサブスク契約をリスト化する、といった具合にステップを踏んで整理していきましょう。クラウドストレージやGoogleアカウントの設定を見直すのも効果的です。重要なのは「完璧さより継続」です。月に一度、契約の見直しやデータ整理の時間を設ければ、無理なく進められます。
家族への伝え方と安心感の与え方
デジタル終活の準備を進めても、家族がその存在を知らなければ意味がありません。準備したリストやパスワードノート、クラウドの情報は、信頼できる家族に伝えておく必要があります。ただし、全員に公開するのではなく「必要な情報を必要な人にだけ渡す」ことが大切です。例えば、金融関係の情報は配偶者に、写真や思い出のデータは子どもに、といった具合に役割を分けると安心です。家族に「もう準備してあるから大丈夫」と伝えることで、本人も家族も心強い気持ちになれるでしょう。
デジタル終活で忘れがちなポイントと注意点
サブスクやポイントサービスの扱い方
デジタル終活で見落としやすいのが「サブスク（定額サービス）」や「ポイントサービス」の整理です。動画配信や音楽配信、電子書籍、クラウドストレージなどは月額契約になっているケースが多く、本人が亡くなっても自動的に課金が続きます。遺族が気づかなければ無駄な出費となり、負担が増えてしまいます。そのため、生前のうちに「どのサブスクに加入しているか」をリスト化し、家族と共有しておくことが重要です。
また、楽天ポイントやTポイント、航空会社のマイルなど、ポイントサービスも忘れがちな資産です。規約によっては相続できない場合もありますが、中には家族が引き継げるものも存在します。例えば、ANAやJALのマイルは相続可能と明記されています。逆にビックカメラのポイントは相続不可です。このようにサービスごとに対応が異なるため、「使い切る」「引き継げるか確認する」という2つの視点で整理しておくことが求められます。
銀行口座・証券口座とマイナンバーのひも付け
銀行口座や証券口座は、相続に直結する重要な資産です。しかし、複数の金融機関に口座を持っていると、家族が把握できず「休眠口座」となってしまう可能性もあります。2018年に施行された「休眠預金等活用法」により、10年以上放置した預金は休眠預金として国に移管される仕組みになりました。そのため、利用している銀行名や口座番号を一覧にしておくことが大切です。
さらに、マイナンバーと銀行口座をひも付けておけば、遺族が一括で口座を照会できるようになります。これにより、家族は複数の銀行を一つずつ確認する手間を省けるため、相続手続きがスムーズに進みます。証券口座やNISA口座、仮想通貨取引所のアカウントについても同様にリスト化しておくことで「デジタル資産」の把握が容易になります。特に近年はネット証券やネット銀行の利用者が増えているため、紙の通帳だけで管理する時代ではなくなっています。
見られたくないデータの扱い方
デジタル終活というと「家族に必要な情報を残す」ことが中心ですが、「逆に見られたくないデータをどうするか」も大切な課題です。例えば、個人的なメモやプライベートな写真、仕事上の機密データなど、家族に公開したくない情報がある場合は、暗号化機能を活用するのが効果的です。市販されている外付けSSDやUSBメモリには、パスワード入力が必須のものや、自動的にデータを暗号化するものがあります。
また、GoogleアカウントやApple IDなどでも「アカウント無効化管理」や「データ引き継ぎ設定」を利用すれば、一部のデータだけを残すことが可能です。こうした設定を行っておくことで、大切な情報だけを家族に渡し、不要な情報や見られたくないデータは残さずに済みます。デジタル終活は「残すもの」と「消すもの」の仕分けをする作業でもあるのです。
まとめ
デジタル終活は、スマホやサブスク、銀行口座、クラウドデータなど現代ならではの資産や情報を整理し、家族にスムーズに引き継ぐための大切な準備です。特にパスワードの管理やサブスク契約の解約方法を共有しておかないと、遺族が困るだけでなく無駄な出費や相続トラブルにつながる恐れがあります。紙のパスワードノートやクラウドサービスを使い分け、家族と話し合いながら整理することが安心につながります。
また、銀行口座や証券口座をリスト化し、マイナンバーとひも付けておくことで相続手続きがスムーズになります。さらに、ポイントやマイルなど「意外な資産」も早めに確認し、使い切るか引き継ぐかを決めておくことが賢明です。最後に、見られたくないデータは暗号化や削除で整理し、「残すもの」と「残さないもの」を明確にしましょう。
デジタル終活は「まだ早い」と思うかもしれませんが、元気なうちに少しずつ取り組むことが一番の安心につながります。家族の負担を減らし、自分の意思を尊重してもらうための前向きな終活として、今日から第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考リンク
東京弁護士会：離婚した人の終活
