近年、「男性育休」の取得率が年々上昇しています。政府が掲げる「男性育休取得率85%」という目標も現実味を帯びてきましたが、実際に長期間の育休を取る男性はまだ多くありません。そんな中、「1年間の育休」を経験した男性がどんな気づきを得たのか、そして育休後の働き方や家族関係はどう変わったのか。この記事では、現代パパのリアルな体験をもとに「育児のいいとこ取りでは終わらない男性育休の本質」をやさしく解説します。
男性育休のリアル:なぜ今、パパの育休が注目されるのか
社会全体で進む男性育休の流れ
厚生労働省によると、2023年度の男性育休取得率は約30%。かつては「取りにくい」と言われた男性育休も、企業の制度整備や意識改革によって確実に浸透しつつあります。特に「育児・介護休業法」の改正により、子どもの出生後8週間以内に2回まで分割取得が可能になるなど、より柔軟な取得が認められるようになりました。
それでも“長期育休”はまだ少数派
短期育休は増えている一方で、半年〜1年といった長期育休を取る男性は依然として少数です。理由としては、キャリアへの不安、収入減、職場の理解不足が挙げられます。今回ご紹介するパパのように「1年間の育休」を取得した事例は、まさに先進的なケースといえるでしょう。
「育児のいいとこ取り」をしていたことへの気づき
インタビューの中で印象的なのは、「自分がいかに育児のいいとこ取りをしていたかに気づいた」という言葉。育児は一瞬の感動や楽しい時間だけでなく、地道で疲れる日常の積み重ね。長期の育休を通じて、父親として“育児の全体像”を体験したことが大きな学びだったといいます。
男性が育休を取るための準備と上司への伝え方
育休の相談は「妻の安定期」が目安
企業によっては申請時期が定められていますが、一般的には妊娠が安定期に入った段階で上司に相談するのが理想です。実例のように「上司の方から育休の話題を出してもらえる」職場であればスムーズですが、多くの職場ではまだ前例が少ないため、具体的なスケジュールや引き継ぎ案をあらかじめ整理して伝えることが重要です。
「長期育休はキャリアの妨げ」ではない
長期の育休を取ったとしても、必ずしもキャリアにマイナスではありません。むしろ近年では「育児経験を経た管理職」への評価が高まりつつあります。実際、1年間の育休後に課長へ昇進したケースもあり、「家族との時間を大切にできるリーダー像」が評価軸に加わりつつあるのです。
育休中の経済面を支える制度を理解する
育休中は「雇用保険から育児休業給付金」が支給され、最大で賃金の67%が保障されます。また、社会保険料も免除されるため、思ったより家計負担は軽い場合も。経済的な不安を和らげるために、事前にシミュレーションしておくことがポイントです。
育休中に気づいた家族の本当の絆
「母乳以外は全部やりたい」精神で挑む
実際に育児を担当してみると、家事・育児の一つひとつが想像以上に大変です。特にお風呂や食事準備、寝かしつけなど、「ママがやっていたこと」をやってみて初めて苦労を実感したという声は多いです。「母乳以外は全部やりたい」と覚悟を決めた体験は、家族の絆を深める貴重な時間となりました。
分担の鍵は「できることをやる、頼ることを恐れない」
「完璧なパパ」を目指すよりも、「自分ができることをやり、できないことは頼る」姿勢が大切です。髪結び一つにしても、最初は失敗の連続。しかしその過程こそ、子どもとの信頼関係を育てるチャンスでもあります。
夫婦関係が深まる“共育”の時間
育休中、夫婦で協力しながら過ごすことで、単なる「家事分担」ではなく「共に育つ時間」になります。お互いを支え合うことで、恋人時代のような新鮮な感覚が戻るという声も多く聞かれます。
復職後に感じた「職場と家庭のバランス」
1年のブランクが生んだ職場の成長
復職後、職場のメンバーが成長していたことに驚く男性も多いです。育休で離れたことで、自分がいなくても回るチーム作りの重要性を実感し、より「任せるマネジメント」への意識が芽生えるようになります。
家庭で得た学びが仕事にも生きる
育児で身につく「傾聴」「共感」「忍耐」は、チームリーダーとしての資質にも直結します。家庭で培ったスキルが、職場での人間関係構築に活かされるという実感を持つ人は多いです。
育休経験が“管理職登用”のきっかけになることも
実例のように、復職後に課長に昇進したケースも珍しくありません。「育休=キャリアの後退」ではなく、「家庭と仕事を両立できる人物」として評価される時代へと変化しています。
これから男性育休を考える人へのメッセージ
「こうあるべき」に縛られない
SNSや周囲の声に惑わされず、「自分たちの家庭に合ったやり方」を見つけることが何よりも大切です。育児には正解がなく、家族ごとのスタイルがあって良いのです。
夫婦の違いを認め、傾聴する
夫婦で意見が違うのは当然です。相手の話をまず聞き、「そう感じたんだね」と受け止めることで、信頼が深まります。特にパパは“解決思考”を抑え、“共感思考”を意識すると円満な関係につながります。
お互いを承認し合う言葉が家庭を温かくする
パパの「やったよ!」に対して、ママの「ありがとう」が返る。そんな小さなやりとりが、家庭の安心感を育みます。どちらか一方が頑張るのではなく、感謝を伝え合うことが育児の原点です。
まとめ:育休は「家族と向き合う時間」を取り戻すチャンス
男性の育休は、単なる「制度」ではなく、「家族との関係を再構築する時間」です。1年間の育休を通じて、「育児はやってみて初めてわかる」「できないことを頼る勇気が大切」という学びを得たパパのように、多くの家庭が“共育”を体験する時代が来ています。
キャリアを止めず、家族の絆を深める。その両立が可能な社会が広がっている今こそ、「男性育休をどう活かすか」を前向きに考えるタイミングなのかもしれません。

